マツダのSKYACTIV-Dはなぜ通常走行中でもNOxの排出が少ないのか。

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MAZDA ATENZA SEDAN GJ XD L Package 03
(Photo by CEFICEFI CC 表示-継承 3.0)

最近話題になっている「国産ディーゼル車について国土交通省が走行調査した結果」ですが、トヨタ・日産・三菱の計4車種が現在の基準値を超える2〜10倍ものNOx(窒素酸化物)を排出していることがわかりました。

  • ディーゼル車の国産4車種 排ガス基準の2~10倍超過

これはある意味当然で、今まで実際に走行した際の排ガス規制と言うのは、少なくとも乗用車については日本ではなかったからです。簡単に言うとお受験だけ、実地なし。この件が世間的にも話題になるようになったのは例のVWのディーゼルエンジンの事件があったから。

そして今回、マツダの2車種(アテンザ・デミオ)は、実走行中についてもNOxの排出量がほぼ規制値内に収まっていることもわかりました。それは何故か。

マツダの現行ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」2機種は、エンジンの燃焼工程そのものでNOxの発生を防いでいるからです。NOxが発生するのは、ディーゼルエンジンの特徴である高圧縮燃焼時に2000℃を超える高温になり、窒素と酸素が化合してしまうため(通常は化合しない)です。なので…

  1. 燃焼温度を下げるために排気ガスの一部を再度吸気させるEGR(排気再循環)を行い、吸気中の二酸化炭素を増やす(酸素や窒素より、二酸化炭素の方が温度が上がりにくい)。
  2. 二酸化炭素が増えると不完全燃焼が起こりやすくなり、PM(黒煤)が増える。
  3. PMを減らすために、圧縮比を下げて空気と燃料が混ざる時間を稼ぐ(不完全燃焼防止)。
  4. さらに燃料の噴射を短時間かつ最大13回に分けて、さらに空気と燃料がよく混ざるようにする(不完全燃焼防止)。
  5. ピストンの形状を工夫し、霧状の燃料がよく広がるようにする(不完全燃焼防止)。
  6. EGRをしていても酸素が増えるようにターボで過給し、パワー・トルクを確保する。

ディーゼルエンジンの燃焼について、ここまで深く追求した自動車メーカーは世界でもマツダが初めてじゃないでしょうか。特殊な機械は使わず、とても理詰めの方法ですが、試行錯誤しながら新たな道を切り開いたんだなと想像します。結果として使用中のほぼ全域でNOxを削減することができました。

ちなみにPMを処理するDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)については酸化触媒を併設していて、エンジンでの燃焼完了後に8回燃料を噴射してPMを燃やしているそうです。

なお、他のメーカーについてはPMの発生を防ぐエンジンを作り、燃焼の後工程で尿素SCR方式を使い、NOxの浄化を行っています。いわゆる触媒の一種ですね。こちらの方式が現在は一般的ですが、低負荷時の低い温度では動作しません。部品供給ベンダーもボッシュのほぼ一社独占状態。コストもエンジン1機分かそれ以上に掛かるそうです。

仕組みの差を考えれば走行調査の結果は当たり前なんですが、ちゃんと調べてみるとマツダのやってることの凄さを再認識します。

こういうのを書くと「#マツダポエム」とか言われちゃうんでしょうけどねー。メーカーが独自の研究開発を地道に続けた結果がちゃんとした形で世の中に出てきた、というのは個人的には評価されていいことだと思います。それが自国のメーカーであれ、他国のメーカーであれ。好きなメーカーであれ、嫌いなメーカーであれ。

この記事を書くに当たっては以下の記事と雑誌を参考にしています。詳細が気になる方はポチッとしてみてくださいな。技術がわかると、クルマはもっと楽しい。

B01BWLITSA Motor Fan illustrated Vol.113
三栄書房
三栄書房 2016-02-15

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